だが、魔界への扉が開かれた瞬間に出来た空間の歪み。
このマンションのオーナーであり、天界の王である天王はその異変を少しも見逃さなかった。
場所は変わって、ここは天界。
薄いカーテンの内側で玉座に座っている天界の王。
その、少しの異変を感じ取った瞬間、天王は僅かに顔を上げた。
『………魔界への扉が開かれた』
声に出す訳でもないその言葉は、人間界に居る一人の天使の元へと送られる。
亜矢の部屋の左隣に住む天使・リョウ。
自室にいたリョウは、僅かに耳に届いたその声に、ハっとして動きを止める。
自分の脳内に直接響く声―――。
『――――魂の器・春野亜矢を監視せよ―――』
確かな言葉として認識は出来ないが、何かがリョウの中に響いた。
リョウは、無意識に歩き始めた。
その声に導かれるようにして、動かされるようにして。
行かなくちゃ――行かなくてはならない気がする。
気が付くと、リョウは亜矢の部屋の中、クローゼットの前に立っていた。
扉が開かれたままのクローゼット。
その中に広がる、闇の空間。
リョウはしばらく、その闇を呆然と見ていた。
だが突然、我を取り戻した。
「これは……魔界への入り口!?」
何故、こんな所に…。そして、何故自分はここに来てしまったのか?
リョウは険しい表情になる。
やがて、力強い意志をこめてその闇を見据えた。
「亜矢ちゃん……!!」
気が付くと、亜矢は何か弾力があって柔らかい物の上で倒れていた。
「アヤ、アヤ!!」
自分を呼ぶコランの声に気が付いて、亜矢は勢いよく起き上がった。
「コランくん……!?あれ、ここは?」
「ここ、オレの部屋だぜ」
え?と、亜矢は辺りを見回す。
亜矢が倒れていたのは、大きくて豪華なベッドであった。
そして、亜矢の部屋の何倍もあるだろう、この広い部屋。
ここは、魔王の城の中の一室なのだろう。
「す、すごい部屋ね…」
「そうか?」
やっぱりコランは王子サマなんだなあ、と改めて驚きの目でコランを見る。
亜矢は立ち上がると窓際まで歩き、窓の外を見る。
魔界とは言っても、人間界の風景と何も変わらない気がした。
今は夜なので景色はよく見えないが、樹木や山、それに城下町に灯る様々な色の光。
今日は、何かの祭りでもあるのだろうか。街に沢山の光が灯っているのが見える。
「あっ、そう言えば魔王と死神は?」
亜矢は振り返ると、部屋のドアに向かって歩き出した。
ドアの正面まで辿り着いた時、突然そのドアが開いた。
亜矢は驚いて、反射的に一歩下がる。
そのドアを開けたのは、女性だった。
「亜矢様、こちらのドレスにお着替え下さい」
その女性は、どうやらこの城の使用人であるらしい。
亜矢が驚いたのは、その女性が人間と全く変わらない姿をしていたからだ。
思えば、悪魔である魔王オランも王子コランも、外見はほとんど人間と変わらない。
本来は魔獣であるディアだって、普段は人間の姿をしている。
どこか、魔界は魔物だらけで恐ろしい所…という勝手なイメージがあったが、少し安心する。
促されるまま、亜矢はドレスを受け取ると部屋の中へと戻った。
女性が用意したドレスに着替え終わると、亜矢はコランの方に振り向いた。
「うわ~~アヤ、きれい!!」
「そ、そう…?ありがと」
照れながら微笑み返す亜矢。
そのドレスは、全体的に黒を基調にし、所どころをフリルであしらった豪華で華やかなものだ。
首元と髪に飾られた深紅の薔薇の花がアクセントになり、黒のドレスと髪によく映え、その色彩の美しさを際立たせている。
魔界のお城に、このドレス。まるで、童話の世界にでも入り込んだ気分だ。
「でも、なんで着替えるのかしら?」
コランはニッコリと笑うと、亜矢の片手を握って引張る。
「これからパーティーなんだぜ!兄ちゃんの所へ行こう、アヤ!!」
「パーティー?」
いまいち状況が良く分からないが、亜矢はコランに手を引かれるまま部屋を出た。
このマンションのオーナーであり、天界の王である天王はその異変を少しも見逃さなかった。
場所は変わって、ここは天界。
薄いカーテンの内側で玉座に座っている天界の王。
その、少しの異変を感じ取った瞬間、天王は僅かに顔を上げた。
『………魔界への扉が開かれた』
声に出す訳でもないその言葉は、人間界に居る一人の天使の元へと送られる。
亜矢の部屋の左隣に住む天使・リョウ。
自室にいたリョウは、僅かに耳に届いたその声に、ハっとして動きを止める。
自分の脳内に直接響く声―――。
『――――魂の器・春野亜矢を監視せよ―――』
確かな言葉として認識は出来ないが、何かがリョウの中に響いた。
リョウは、無意識に歩き始めた。
その声に導かれるようにして、動かされるようにして。
行かなくちゃ――行かなくてはならない気がする。
気が付くと、リョウは亜矢の部屋の中、クローゼットの前に立っていた。
扉が開かれたままのクローゼット。
その中に広がる、闇の空間。
リョウはしばらく、その闇を呆然と見ていた。
だが突然、我を取り戻した。
「これは……魔界への入り口!?」
何故、こんな所に…。そして、何故自分はここに来てしまったのか?
リョウは険しい表情になる。
やがて、力強い意志をこめてその闇を見据えた。
「亜矢ちゃん……!!」
気が付くと、亜矢は何か弾力があって柔らかい物の上で倒れていた。
「アヤ、アヤ!!」
自分を呼ぶコランの声に気が付いて、亜矢は勢いよく起き上がった。
「コランくん……!?あれ、ここは?」
「ここ、オレの部屋だぜ」
え?と、亜矢は辺りを見回す。
亜矢が倒れていたのは、大きくて豪華なベッドであった。
そして、亜矢の部屋の何倍もあるだろう、この広い部屋。
ここは、魔王の城の中の一室なのだろう。
「す、すごい部屋ね…」
「そうか?」
やっぱりコランは王子サマなんだなあ、と改めて驚きの目でコランを見る。
亜矢は立ち上がると窓際まで歩き、窓の外を見る。
魔界とは言っても、人間界の風景と何も変わらない気がした。
今は夜なので景色はよく見えないが、樹木や山、それに城下町に灯る様々な色の光。
今日は、何かの祭りでもあるのだろうか。街に沢山の光が灯っているのが見える。
「あっ、そう言えば魔王と死神は?」
亜矢は振り返ると、部屋のドアに向かって歩き出した。
ドアの正面まで辿り着いた時、突然そのドアが開いた。
亜矢は驚いて、反射的に一歩下がる。
そのドアを開けたのは、女性だった。
「亜矢様、こちらのドレスにお着替え下さい」
その女性は、どうやらこの城の使用人であるらしい。
亜矢が驚いたのは、その女性が人間と全く変わらない姿をしていたからだ。
思えば、悪魔である魔王オランも王子コランも、外見はほとんど人間と変わらない。
本来は魔獣であるディアだって、普段は人間の姿をしている。
どこか、魔界は魔物だらけで恐ろしい所…という勝手なイメージがあったが、少し安心する。
促されるまま、亜矢はドレスを受け取ると部屋の中へと戻った。
女性が用意したドレスに着替え終わると、亜矢はコランの方に振り向いた。
「うわ~~アヤ、きれい!!」
「そ、そう…?ありがと」
照れながら微笑み返す亜矢。
そのドレスは、全体的に黒を基調にし、所どころをフリルであしらった豪華で華やかなものだ。
首元と髪に飾られた深紅の薔薇の花がアクセントになり、黒のドレスと髪によく映え、その色彩の美しさを際立たせている。
魔界のお城に、このドレス。まるで、童話の世界にでも入り込んだ気分だ。
「でも、なんで着替えるのかしら?」
コランはニッコリと笑うと、亜矢の片手を握って引張る。
「これからパーティーなんだぜ!兄ちゃんの所へ行こう、アヤ!!」
「パーティー?」
いまいち状況が良く分からないが、亜矢はコランに手を引かれるまま部屋を出た。