「じゃあ行ってくるね。玖音、よろしく」
「あぁ、任せとけ」
「ねぇなんで。俺に任せてよ」
「添伽は・・・喧嘩しないでね?」
「・・・う・・・」
土曜日、玖音に家のコトを頼んだ時、添伽が割って入ってきた。
いやぁ・・・ねぇ?
喧嘩・・・されたら困るし、大人しくしてくれる・・・かな。
「じゃあ・・・添伽もよろしくね。私の部屋は掃除しなくていいからね」
掃除担当の想蘭と玖音と魅蕾にそう伝えて、私は家を出た。
カバンを持って学校に行き、1度教室に入る。
「出席確認するぞー」
家にはついてこないけど、学校では先生が仕切ってくれた。
「~~いるなー?~~も・・・いるな」
先生が1人ずつ確認し、私たちのクラスは止まらせてくれるクラスメイトの家に向かうことになった。
外には8人乗りの車が何台か用意されていたけど。
「蓮雅はこっち」
泊まらせてくれる子が乗るらしい6人乗りの車に乗せられた。
運転席には運転手さん、助手席には誰も乗っていなくて、後ろの4席は何故か向かい合っていた。
「ありがとう」
車内にはドリンクバーもあって、紅茶が出された。
泊まらせてくれるのは一卵性の三つ子。
長男の凛亜(りあ)、次男の琉亜(るあ)、三男の零亜《れあ》。
3人とも容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群の恋人としては超・優良物件なんだけど、問題は性格にあった。
凛亜は人間不信で、寄ってくるなオーラをいつも放っている。
琉亜は人嫌いで、わざと子馬鹿にしたような態度をとる。
零亜はニコニコしてるけど、全部計算して行動してる。
つまり、零亜の笑顔や優しさは偽り・・・というか計算しつくされて出た作り物。
で、そんな3人がなんで泊めさせてくれるのかって言うと。
・・・私がお願いしました。
3人とも、私には心を開いてくれてるし、行けるかな?みたいな軽い気持ちでお願いしたら普通にOKされた。
「みんなは大広間に布団を敷いてもらうけど、蓮雅は俺らと寝よーね」
凛亜が突然そう言い、私は首をかしげる。
「え、みんなと同じ部屋でいいよ?」
「駄目に決まってんだろ」
私のセリフに琉亜が即答し、零亜も笑顔で言った。
あぁ、この笑顔はホントの笑顔だな・・・なんて思ってる暇はなく。
「蓮雅が俺らと寝ないならみんな帰そ」
わ、コレ脅されてます?
お前1人のわがままでみんなが泊まれなくなるんだよ的な。
「わかったよ、みんなで寝よう」
きっと・・・きっと、3人とも人間が無理だから大広間では寝たくないんだと思う。
でも・・・なんで私は3人と寝るの?
抱き枕?抱き枕なんだね?
わかったよ、私に枕になってほしいんだね?
私は枕にちょうどいいのかな・・・。
何気にショッキング・・・あはは。
「・・・着いた」
車が止まり、凛亜が席を立った。
運転手さんが開けてくれたらしい車のドアから凛亜が出る。
琉亜と零亜が出るのを待とうと席に座ったままでいると、それを察したのか2人とも出てくれた。
それに続き、シートベルトと、座席の皺を整えてからドアに手を掛ける。
「・・・ん」
ドアから顔を出すと、凛亜が手を差し伸べていた。
「ありがと」
私は凛亜にとって、車から出る時に躓いて転ぶような子供らしい。
ちょっと過保護すぎないかな・・・。
丁寧に車から降ろされ、私は周りを見渡した。
「わぁ・・・広い・・・あ、みんなも着いてるね」
車がたくさん止まっていて、みんなが出てきた。
そして目の前には豪邸。
「ここが凛亜たちの家?」
「そーだぜ。まぁ、クラスの奴らはこんな家入る機会もないだろーしな!」
すぐに反応した琉亜から煽り発言が出て、私は思わず苦笑を零した。
琉亜の煽り癖は直らないんだね・・・。
でもそんな性格がいいって女の子からは結構人気なんだよね。
馬鹿にすれば人は離れていくって思ってるのかもしれないけど、琉亜たちは例外だし。
「よーこそ我が家へ」
零亜がお馴染みの作りニッコリ笑いで玄関のドアを開け、みんなを中に迎え入れた。