・・・さて?
私が通っている学園では、行事ごとが1年でたくさん開催される。
修学旅行は全学年年2回。
キャンプと校外学習は年1回ずつ。
体育祭、体育祭前夜祭、球技大会、球技大会前夜祭、文化祭、文化祭前夜祭、3年生を送る会、そして、アートフェスタ。
アートフェスタとは、美術で作った作品を展示して、親や他学年に見てもらう・・・行事?
で、そろそろ文化祭前夜祭がある。
その次の日が文化祭なんだよね、当たり前だけど。
ちなみに前夜祭は、それぞれなにをするかクラスで決めていいんだよ。
クラスメイトの家や学校でお泊り会、校庭でバーベキュー、遠足、・・・などなど。
私のクラスは、クラスメイトの家でお泊り会だ。
泊まる家の子は両親がお金持ちで、体育館くらいの部屋があるからソコに布団を敷いて寝るらしい。
ご飯はお庭でバーベキューらしいよ。
「ねぇ、ちょっと今週の土曜日、家帰って来れないけどだいじょーぶ?」
夜ご飯の時間、美味しそうに食べてくれるみんなに声を掛けると。
「・・・えっ?」
「は?は?」
「・・・無理」
「だいじょーぶ、じゃないなぁ・・・」
全員イヤイヤと首を振ってしまった。
「え、どうしても行かなきゃいけないんだけど・・・」
「・・・やだ。絶対反対。帰ってこないってどーゆーコト?」
「なに、彼氏の家にでも泊まるの?アブナイよ。絶対駄目」
添伽と魅蕾にそう言われ、私は上目遣いにみんなを見つめてみた。
「文化祭の前夜祭なんだ・・・全員参加なんだけど・・・みんな困っちゃうな・・・」
どうしよう・・・と今度は俯いてみる。
「うっ・・・でもねぇ・・・僕も反対なのを曲げるわけにはいかないなぁ・・・」
想蘭もそう言って苦笑したとき、玖音だけが私を見て小さく笑った。
「俺は行っていいと思うが。蓮雅にも友人がいるんだろう」
「く、玖音~!」
思わず隣に座る玖音の腕に抱きつく。
「うぅ、玖音~・・・ありがとぉぉぉぉぉぉぉ・・・っ!!」
そのまま玖音の腕にスリスリと顔を擦り付けた。
「ちょっちょ・・・玖音、なに1人で株上げてんの!」
「知らん。蓮雅がそれくらい行きたがってたんだろ」
私の反対側の隣に座っていた魅蕾は焦ったように私と玖音を引き離した。
「ね、蓮雅。俺にも抱きついてよ?」
ふわっと腕を広げ、ニッコリ笑う魅蕾。
・・・もしかして魅蕾こそ妹離れできてない兄だった・・・説。
「ん?いいけど・・・」
なんで私?と思いながら腕の中に入ると、魅蕾はビクリと震えた。
「・・・魅蕾・・・?」
ぎゅっと強く抱きしめられ、戸惑いながら名前を呼ぶと魅蕾は離れて行った。
・・・いや、離された。
「・・・蓮雅、俺以外の男に抱き着くの、駄目・・・!」
いつの間にか添伽が魅蕾の後ろにいて、魅蕾の腕を掴んでいる。
「・・・添伽?ご飯中に席立ったらお行儀悪いよ?」
「・・・そんなコト気にしてる場合じゃない」
添伽はむすっとした顔で魅蕾を見つめ、・・・。
「・・・」
ぽいっと放り投げた。
「てっ添伽!」
投げられた魅蕾は床で打ったらしい背中を押さえ、痛そうに呻いている。
「魅蕾、大丈夫・・・?」
「あ、大丈夫大丈夫」
駆け寄ると、魅蕾は苦笑しながら手を振って見せた。
「ならいいけど・・・寝る前とか、痛かったら言ってね?湿布(しっぷ)貼るから」
「蓮雅に貼ってもらえるなら幸せだね・・・」
魅蕾が何故か少し嬉しそうに笑って立ち上がり、席に着こうとする。
着こうと、して──。
「・・・添伽、なにしてんの・・・」
魅蕾の席に添伽が座っていた。
「添伽、席に戻って」
「・・・俺、蓮雅の隣がいい」
「んなコトわかってるって。でもジャンケンで勝ったの俺と玖音だから」
バチバチしはじめた2人を呆れたように見つめる玖音。
それを気にせず黙々とご飯を食べては『美味し~い!』と私に向かって言う想蘭。
そして2人の後ろで怒りに震える私・・・。
                                                                 
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「喧嘩終了っ!」
                                                                  
思わず叫んだ私の声は家中に響いてしまった。