「・・・こっち」
階段を抜けてついた教室。
中から3人の気配がする。
先客・・・?
でも宵冬さんは遠慮なく扉を開け、中にずかずかと入る。
「宵冬様!」
執事服を着た男の人と、パーティ用のワンピースを着た女の人と、シンプルだけどお金持ち感あふれる男の人。
「そちらの方は・・・?」
執事さんは、私を見て目を見開いた。
それを見ず、私は思う。
あぁ、執事服から着替えてなかったら本物の執事さんとおそろいで驚かれたかも・・・と。
なんで着替えちゃったのぉ・・・!
「・・・蓮雅を候補に入れろ」
「レンガ・・・様?そちらの方ですか?」
「そう」
「・・・かしこまりました。宵冬様から候補に入れる方なんて初めてですね」
執事さんの言葉を無視し、宵冬さんは私に帰るように言う。
・・・私、なんのために呼ばれたの?
「えと・・・失礼します?」
邪魔なドレス部分をつまんで、急いで化粧室に戻る。
「あ、蓮雅来た!俺の頼むー!」
私に気づいた琉亜に大きな声で名前を呼ばれた。
「はいはい、行きますー」
苦笑いしながら琉亜に近づき、服装をじっくり眺める。
「ふー・・・ん」
宵冬さんと同じくセンスがいい。
ジャンルで言うと・・・時代系、だろうか。
紺色と灰色の丈が長い袴に黒のコート。
和洋折衷、のつもりなのか。
和風な服に、腕や指にはアクセサリーが。
首には金にも銀にも見えるシンプルなネックレス。
「琉亜、やるねぇ」
ふふふと笑いながら褒め、水で濡らした髪をクシャクシャッとする。
そのままワックスで固め、形を整えた。
「なんかセクシーだねぇ」
冗談めかして椅子を回し、琉亜を見る。
「髪の毛に合わせて少し開けていーい?」
「ん?あぁ、いーぞ」
「どーもー」
ペコッと頭を軽く下げ、袴の羽織る部分に手を掛ける。
あそこね、なんか、浴衣で言うと、帯で止めないとピラッてはだけちゃうところトコ。
少し隙間を開けると、白い肌が目に入って私は満足げにむふーと息を吐いた。
「どうだ?鍛えてるだろ」
「うん、筋肉凄いね。優勝してもおかしくないセクシーさ。もしかしたら文化祭に来た人からモデルとかのスカウト受けるかもよ」
「お、ホントか?俺ってセクシーなの、合う?」
乱暴な雰囲気漂う琉亜だからこそ、セクシーなのだ。
気だるげなオーラを纏った、艶やかな男の人。
わぁ、女子が見たら発狂しちゃうかも。
「合う合う。琉亜、めっちゃいーよ。なんならセクシー部門なんて作ろっか?琉亜、絶対優勝じゃん」
セクシー部門があるなら、と考える。
爽やか部門とか天使部門とかファンシー部門とかありそう。
「いやいや、いーよ。総合で優勝して見せる」
「おっ格好いいコト言うねー」
私に、男前!と言われた後、琉亜は嬉しそうに化粧室を出て行った。
すると早速廊下から女子の悲鳴が聞こえる。
さすが琉亜。
女子のハートを狙い撃ち、なんてね。
                                                              
第1部門にエントリーするのは約30人。
そのなかで男女5人ずつ、投票で選ぶ。
第3部門まであって、男女それぞれ15人ずつ、最終的に集まる。
そしたらその中から女子の部優勝、準優勝、男子の部優勝、準優勝を決める。
第1部門には琉亜と宵冬さんが出る。
凛亜が第2部門で、零亜が第3部門。
想蘭たちは4人とも第3部門だから・・・第3部門から出てくる男子5人は零亜と想蘭たちかな。
女子は年上が好きだから、想蘭たち大学生は人気なはず。
これでみんなうちのクラスに来てくれれば・・・むふふ。
私は文化祭の後夜祭で決まる、優勝を取れるかと思い始める。
一番客が来て、評価が高かったクラスに、優勝が告げられる。
優勝したらクラスで焼き肉に行けるのだ。
準優勝もあって、準優勝はクラスでファミリーレストランに行ける。
やっぱり、狙うは優勝だよねっ・・・。