「ようこそいらっしゃいました、お嬢様方。こちらにお願いいたします」
やってきた女性2人に声を掛けながらニッコリ笑うと、2人はポッと顔を赤く染めた。
「ではお嬢様。こちらへどうぞ」
体育館の前で待機している私は服がある部屋を手で示しながら扉を開ける。
「こちらにお服がたくさんございます。ぜひ、ご自身のお好きなジャンルからコーディネートしてみてくださいね」
そして、と更衣室の前で立ち止まる・・・2人の女性と男装してる女執事。
あぁ、なんてカオスな・・・ここは中世ヨーロッパか!
「ショーに出場されるのですね?私も出場しますので、お嬢様方のお姿、楽しみにしておきます」
だからはやくわたしから離れてねー・・・と遠回しに言う。
「はぅっ・・・とっ尊いっ・・・!」
「推し・・・!推しぃぃ・・・!!」
さっきまでの上品に見せようとしていた視線はどこに行ったのか、鼻息荒くそう言って名残惜しそうに部屋の中に入って行った。
はぁ・・・接客って面倒くさいな・・・。
髪と目の色も目立つし・・・。
まぁ、バイトで慣れてたからいいけど私は基本、目立ちたくなかったから裏側だった。
地毛、なんだよなー・・・カラコンもしてないし。
「あの・・・ショーに出たいんですけど・・・」
「あぁ、こちらでございます。まずお服は・・・」
次に来た男性の集団にも同じような説明をし、それを何組か繰り返す。
「蓮雅ー!着替えてくれるー?」
「あっ・・・りょーかーい!」
もう1時間経ったのか・・・。
ってかなんで私だけ1時間ごとに着替えるの・・・。
派手な見た目の看板にしようとしてるのか?!
「次はなにに着替えればいーい?」
「着物ドレスー!」
着物ドレス・・・?
また派手で昔っぽい・・・いや、ドレスが組み合ってるから現代風なのか?
「あ、これ・・・」
奈良時代の貴族が着ているような着物が上半身。
下半身は大人っぽい水色のドレスで、控えめにフリルがあしらわれている。
丈は足首が見えるくらい。
「かーわーいーいー!なんでも似合うね!」
髪まで直すまでするらしい。
ホントに奈良時代風にするらしく、頭上で長い髪を輪っかに結われ、金の髪飾りを付けられた。
わぁ・・・化粧も昔っぽいし、タイムスリップしたのかとか思われそうな・・・今の世界の技術じゃ無理だけど。
「いらっしゃいませ。ショーに出場される方はこちらです」
見た目通り上品に・・・一人称も(わたくし)で、と言われてるから、高貴な女性がイメージらしい。
私は高貴というか問題児グループなんだけど・・・あ、問題は起こしてないよ?
えーっと・・・楽しくワイワイしてる感じの子?みたいな。
「蓮雅ー!助けてっ!」
着物ドレスで30分くらい経ったところで、ちょっとした事件が起こった。