よし、昨日の夜できなかった説教タイムだ。
制服に着替えながらなにを言おうか考える。
少しでも言葉に詰まったら零亜に言い返されるもんね。
最後にカーディガンを羽織り、私は部屋を出た。
化粧やヘアセットは学校でやるから、櫛で梳くだけで今はいいのだ、なんて楽。
「零亜?」
声を掛けながら零亜を探すと、目の前から本人が現れた。
「部屋コッチにあるよ」
いつもの爽やかな零亜に戻ってる、けど・・・。
瞳の奥には獰猛な光が宿っていた。
連れてこられたのはソファやベッド、机に椅子など必要以上のものがないシンプルな部屋。
「ココで襲っていいの?」
「私は怒りに来たの」
コテンとわざとらしく首をかしげる零亜は床に座って正座をする。
なるほど・・・怒られる気はあるんだ。
ならば私はとソファの上に座り、腕を組む。
「まず、恋人じゃない人にあんなことなんでしたの?私じゃなきゃ勘違いされてたよ?」
「・・・蓮雅も勘違いしていいんだよ?」
「しないから!・・・で、これからはあんなコトしちゃ駄目。約束守れないなら私はもう零亜とは話しません」
「・・・やだ」
こんな時にだけ子供みたいに縮こまる零亜に少し心が痛んだけど、私は心を鬼にして続けた。
「零亜」
「・・・」
黙りこくってしまった零亜の頬に手を当てて、私は上を向かせた。
必然的に、目が合う。
「・・・っ」
まっすぐに見つめていると、零亜の顔が赤く染まり出した。
照れてるなコレ・・・まぁいっか。
「本人の同意なしにあんなコトしちゃ駄目でしょ。今回はお小言で済ませるけど、またやったら雷落ちるからね?」
脅しにならない脅しを言ってみると、零亜は飼い主に怒られた大型犬みたいの目を伏せて震えだす。
「・・・もう」
あざといのはズルい。
これ以上叱れなくなるのわかってるんだから。
「じゃあもういいよ。みんなを起こしに行こう。・・・っとその前に」
私はソファから降りて零亜の額に口づけた。
「今日は頑張ろうね。先に凛亜と琉亜を起こしに行って」
キスでビクリと反応した零亜の頭を撫でて、私はその部屋を出て行った。