「おやすみ蓮雅ー!」
「うん、おやすみー」
「蓮雅また明日なー!」
「寝坊しないでねー?」
「朝ご飯楽しみだなー!」
最後に関係ない挨拶があったけど私は気にせずその場を去る。
夜、みんな大浴場に入ってパジャマになっていた。
零亜と家に許可を取り、大広間で枕投げをするんだとか。
私も参加したかったけど、『・・・やだ』という凛亜の一言であきらめた。
凛亜には逆らわないほうがいいぞオーラが溢れんばかりに出ているのだ。
だから、みんな三つ子に用事がある人は零亜に言うんだ。
そういう点では、さすがプレイボーイだと思う。
「・・・パジャマ可愛い」
必要以上のコトを言わない凛亜だけど、たまにストレートなところがあるよね・・・。
反応に困るよ。
「ありがとう、凛亜もカッコいよ、気崩してるの。三つ子揃って雑誌のモデルさんみたいだね」
私が言える最大限の誉め言葉を出し、私はみんなに笑いかけた。
すると。
「「「ジャンケンポン!」」」
私の目の前でジャンケンが始まった。
「「「ジャンケンポン!」」」
三つ子は絆が強いらしく、32回あいこという白熱した試合を見せてくれた。
「・・・勝ち」
まずは凛亜が独り勝ち。
なんのジャンケンかは知らないけど「おめでとう」と言っておいた。
次、琉亜と零亜の試合。
2人だからか、あいこは16回だった。
結局勝ったのは零亜。
負けた琉亜はガーン・・・とあからさまに落ち込んでいた。
「ま、まぁまぁ、なんのジャンケンかは知らないけどそう落ち込まないで」
「寝る順番のジャンケンだよ」
寝る順番・・・?
え、睡眠交代制?
「あ、場所のね」
零亜が私の顔を見て気付いたのかそう付けたし、順番を教えてくれた。
とりあえずさっきのジャンケンは私の隣を決めるジャンケンだったらしい。
決まった順は右から凛亜、私、零亜、琉亜らしい。
私の隣になれなかったから落ち込んでいたのか琉亜は・・・。
「琉亜、体育祭前夜祭もお泊りになったら隣で寝よ?」
「ホントか?絶対?じゃんけんで負けても?!」
「うんうん、じゃんけんで負けてもいいから」
一気に明るくなった琉亜は顔を上げ、私の手を握ってブンブンと上下に振った。
「離して。さ、蓮雅行こ」
私から琉亜を引き離し、零亜は廊下を歩きだした。
「ココが俺たちの寝室。4人分のベッドを1つにしてもらったんだ」
「1週間で?!」
特注だよね?
うわー・・・ボンボンだよ。
金持ちこわ。
「蓮雅真ん中ね。ハイ布団入って」
零亜はぽすんと私をベットに向けて押し、私はその力に逆らえずベッドに倒れた。
「寝よ~、あ、恋バナする?」
寝る時って男子も恋バナするのか。
「私に恋愛系の話は無いからね」
先にそう言っておくと、3人とも興味を失ったように横になる。
私の横に寝転がった零亜は私を後ろから抱きしめ、抱き枕気分になった。
嗚呼・・・生まれ変わっても抱き枕にはなりたくないな、と。
だって抱き枕って潰されるし落とされるしヨダレ付くし。
小さい子だとなおさらね。
「・・・ん」
「・・・零亜?・・・ちょっ・・・と!」
首筋に冷たい唇を感じる。
唇は次第に熱を持ち、肩をかまれた。
「零亜っ・・・?どうしたの」
舌が首筋を舐めていく。
「ひゃっ・・・っぅ?」
れ、零亜が暴走してるぅっ・・・。
「んっ・・・」
下は顎にたどり着き、慌てて反対にいる凛亜に目を向けて助けを求める・・・も。
「う、うそっ・・・」
この短時間で!寝てる!
凛亜の後ろで寝転がっている琉亜も!
なんでそんなに早く寝れるの?
私も寝たいよぅ。
「・・・蓮雅」
零亜が低くて甘い声を出す。
そのまま体が反転して零亜のほうに向けられた。
「やだ、零亜っ・・・止まって・・・!」
必死に近づいてくる零亜の胸板も押したけど、効果はない。
額に唇が触れ、流れるようにこめかみやまぶた、頬にキスが落とされる。
大変だ。
このままでは唇が当たってしまう。
「零亜・・・?寝ぼけてるの・・・?」
声をかけてみると、零亜の瞳はしっかりと開かれている。
「蓮雅・・・ちょーだい・・・」
「なに、をっ・・・」
熱のこもった瞳に見つめられ、目を逸らす。
「蓮雅の・・・ぜんぶ」
ぜ、ぜんぶっ・・・?
「だから・・・許して」
だからって・・・零亜はどうしちゃったのっ・・・。
唇が近づいてくる。
せめてもの抵抗として顔をそむけても、無駄だ。
唇が、触れる。
「んっ・・・れ、あ・・・っん」
やめようよ。
私たち、付き合ってすらないんだよ?
そんな私の願いもむなしく、唇を割って零亜の舌が入ってくる。
熱い塊が口腔で暴れまわり、自然と体が跳ねた。
「ん・・・っや・・・ぁ」
力の入らない腕で零亜の肩を押し返しても、零亜は動かない。
それどころか覆いかぶさってきてしまった。
「いいよ・・・俺が、相手なら・・・」
ちがう、ちがうよ。
零亜は・・・私を困らせたいの?
意地悪でやってるだけ?
そんなの駄目だよ。
クチャクチャと卑猥な音だけが部屋に響く。
私の舌が絡め取られ、私を抱きしめる零亜も力も強くなっていく。
「っは・・・ん・・・や、ひゃっ・・・っん!」
零亜の大きな右手が腰をなぞった。
左手は下に伸び、太ももを優しく撫でる。
「れ、零亜・・・!もう駄目っ・・・」
残りの力で体を回し、上にいる零亜を横に倒した。
「零亜、こーゆーのは良くないよ・・・」
彼女にでもない人にこんなコトするのは間違ってる。
零亜が変な人になったらいやだよ。
「蓮雅は・・・俺のには、なってくれないの?」
「零亜の・・・?ちょっとよくわからないけど!とりあえず寝よーよ。明日に響くから」
大切な話はまた明日。
そう心の中で決めて目を瞑った時。
「・・・んぁぅ?」
首筋にチクリとした痛みが走る。
「零亜・・・!もう寝なきゃ駄目。帰国子女でもこんなコトしないでしょ?していいのは額と頬だけ。いいね?おやすみ」
零亜を引きはがし、私は説教のコトはすっかり忘れてもう1度目を閉じた。