放課後、私は見てしまった。
「あれ、どうしたの。雅空、部活でしょ?」
「そうなんだけど…」
その後、雅空は、香織の耳に口を近づけて…、2人にしか聞こえない声でささやいた。
「じゃあ、土曜日、学校で待ち合わせね」
指1本すら動かない状態に、私は呆然としていた。
このままじゃバレるかもしれない。
下唇を軽く噛んで、ハッとした私は、しのび足で逃げることができず、ダッシュして家に帰ってしまった。
そして、ベッドの枕に顔をうずめた。
恋するのって、こんなに苦しい。キラキラして、簡単に両想いになれるものじゃないんだ…。
これは勝手な言い訳かもしれないけど、あの2人が結ばれちゃったら__
創紀くんだって、悲しいよね。
苦しくて、儚くて。
ちょうどそのとき、花火が上がって。自分の恋と、花火を重ねてしまったんだ。
「…おはようございます」
「おはよう…って、わぁ!なんか奈那、げっそりしてるよ⁉︎ 大丈夫⁉︎」 
乙音がパッと駆け寄って、私を心配してくれた。
そんなにげっそりしてるんだ…、ダメだな、私…。
思わずため息をつく。
「わかってないですねー、乙音選手。これは恋する乙女のため息ですね」
「ええっ⁉︎ そうなんですか⁉︎ さすが亜美選手ですね。たくさん恋をした経験がこんなにいかされるなんて…!すごすぎます‼︎」 
2人が楽しく会話をして、私を励まそうとしてくれてるけど、私は全然楽しい気持ちにはなれなかった。
本当に3人には迷惑かけてるなぁ。
「ごめんね」
「え、何が?全然大丈夫だよ?」
乙音がすぐに反応してくれる。
「誰でも悩みはあるよ!気にしないで」
亜美も眉を下げて言ってくれる。
「ありがとう」
私はそれでもずっと気持ちは落ち込んだままだったんだ。