「タカフミィーニ、お前の願いとはなんだ?」
「はっ……私の母は、かつて聖女でございました。その後継者として、ララコスティさまをご指名したのです」

会場が騒つく。人々が顔を見合わせ、「聖女ですって⁈」などとわたくしを見ながらひそひそ話をしているのが聞こえてくる。

あ、あの、この場で何を言い出すの?

「ララコスティが? そうか……」
「私はララコスティさまとご一緒に、この国を支えて行きたく存じます」
「それは本人に問うべきではないのか?」
「はい。では国王陛下お立ち会いのもとで問わせて頂きます」

タカフミィーニさまがわたくしの前で片膝をつき、手を差し伸べられた。

「えっ、えっ⁈」
「ララコスティさま、貴女を一生幸せにすることを誓います。どうか私と結婚してください!」
「──け、結婚……⁈」

わ、わたくし……まだ、その、心の準備というものが……。

「私の妻になってください!」

ヒ、ヒヤーーッ! ど、どうしましょう⁈ でもわたくしもタカフミィーニさまが好き。前世から大好きなの! この気持ちは変わらない!

少し震えているタカフミィーニさまの手に、そっと自分の手を重ねた。

「わたくしのような悪役令嬢でもよろしくて?」
「フッ……貴女の素顔を私は知っている」

そのシルエットを見た会場の全員が「わーっ!」とわたくしたちの成婚を祝福の声で鳴り響かせた。

「我が国に新しい聖女が誕生したのだ。そして次期国王と結ばれた。この国は争いのない幸せな国へと発展するだろう。皆の者、聖女と王太子に礼を尽くし、宮殿へ迎えようではないか!」
「ははーーっ!」

陛下のお言葉で皆がわたくしたちへ跪く。モモシャリーも観念したのか、ヨロヨロと跪いた。

「ま、負けたわ……ララコスティ。やっぱり貴女には敵わない。サラーニャ? 何してるの⁈ 聖女に跪きなさい!」
「……は、ははっ」

後ろ手に縄を括られたまま、サラーニャも礼を尽くして跪いた。

何という大ドンデン返しなんでしょう。シンクリア王子もモモシャリーもサラーニャも「ざまあ」ですわ! 

……でも、わたくしも聖女としてはまだまだの存在。モエのようになれるかしら。

──と、その時だった。不意に前世の記憶が蘇る。三千年前、モエやアヤ、それにモモ、サラと一緒に怨霊を浄化している姿だ。そう、我らはタカフミを総帥とする霊媒師だったのだ。今、完全に思い出した。

わたくしはタカフミや皆を庇って怨霊の攻撃を一身に受け、魂が抜け落ちてしまった。それを霊族アプレンが追いかけてくれたけど……突然のお別れだった。

ここで皆に会えるなんて嬉しいよ。でも、モモやサラはわたくしの大切な仲間だった。なのに何でこの世界では敵対してるの? 

『それはお前の心の中にある』

アプレン? 今、アプレンの声が聞こえた。わたくしの心って? わたくしはモモと親友だった。でもいつも負けたくないって気持ちがあった。そしてサラはどこか見下げて接してた気がする。つまり、今の状況はわたくしの心がそうさせたって言うの?

わたくしのせい? わたくしが未熟者だったから⁈