国王陛下がこのような私的なパーティーにお出ましになられるなんて聞いたことがない。会場に居る全ての人々が驚きとともに片膝ついて礼を執った。勿論わたくしもそれに習う。

「こ、これは陛下、私どものパーティーへお越し頂くとは恐悦至極でございます。先程の発言、少々行き過ぎましたこと、お詫び申し上げます」
「シンクリア。お前とモモシャリーの婚約を国王として認めよう」
「あ、ありがとうございます!」

その瞬間、モモシャリーは後ろへ振り返り、わたくしに勝ち誇った表情をみせた。わたくしは余裕の笑みで応戦したものの、複雑な心境になる。

あぁ、いくら騎士団を味方に粋がっていても相手は次期国王と次期王妃なのね。悔しいけどこれが現実なのか……。

「それからこの場を借りて、皆の者に話さなければならないことがある」
「陛下、何でございましょう?」
「うむ、ルイ公爵のことだが……」
「ルイ家は隣国へ追放となってますが?」
「ルイは私の密命で隣国へ赴任させていたのだ。内戦の仲裁でな。そして見事、戦争を終結させることに成功した。流石は我が国の筆頭公爵家である」
「えっ⁈ ルイ家は汚職したんでしょう?」
「汚職などしておらん。誰かが勝手に金塊を送りつけただけで、直ぐに私に報告があったのだ」
「そ、そんな……」
「お前が勝手に追放と思っていただけ……ではないのか?」

シンクリア王子に焦りの色が見える。

「そして、ゼアス公爵は……」

モモシャリーは王子と婚約することで何か特別な地位でも頂けると思ったのか、期待しながら陛下のお言葉を聴き入ってる。

ところが、

「ゼアスは不正に財産を蓄えこの国を大いに乱した。よって公爵位を剥奪の上、国外へ追放することに処する!」
「……なっ、何と仰せられますか⁈ 陛下⁈」
「ま、まさか……!」
「この宮殿でも残念ながら不特定多数の貴族へ金塊を送りつけ、政治の独占と堕落をもたらしていたのだ。私はルイ家を陥れようとしたゼアスを許さない」

なるほど、ゼアスのはかりごとが上手くいったと王子は勘違いしてたわけね。と言うことは王子もグルだったのか。

それにしても陛下? ここで公開処刑する気なの⁈ あらー、モモシャリーのお顔が凍りついてるわ。うふふ。

「よって、お前らの結婚は認めるが、この国から即刻出て行って貰おう」
「お、お待ちください! 私も国外追放ですか⁈ いいのですか⁈ 王位継承者が不在になれば国は乱れます。どうかお考え直しをお願い申し上げます!」
「シンクリア、お前も金塊を貰っているだろう⁈」
「あっ……い、いや、あれは」
「お前に国王は継がせない」
「くっ……では、誰が、誰が居るんですか⁈ ……ハッ、まさか行方不明の第二王子ですか⁈ そんなの信じられない。何処の誰かも知らない男にこの国を託すなんて、どうかしていますよ!」
「ん? お前もよく知ってる男だが? この際、皆の者に紹介しとこう。我が第二王子は……」

え、誰、誰、誰、誰なのよ⁈

「──タカフミィーニだ!」

な、な、何ですってーーーっ⁈ タカフミィーニさまが王子⁈ まさかの隠し子なのー⁈

会場に居る貴族、騎士団、召使い全員が驚きのあまり声が出ない。そして視線はタカフミィーニさまに注がれていく。

タカフミィーニさまは、スッとお立ちになられた。

「お前に次の国王を継承する。この腐りかけた国を元通りにするのだ」
「国王陛下、謹んでお受け致します。つきましては私からお願いがございます」

いや、ちょっと待って! 待ってよ! この展開についていけないよ! わたくしを置いてけぼりにしないでー!