そこへ一人の団員が慌てて駆け込んできた。

「ララコスティさま、申し訳ございません! 団長がタカフミィーニ副団長とララコスティさまの身柄を確保せよと命じました。我々も抵抗していますが、多勢に無勢でもはや守りきれません!」
「ララコスティさま、早く逃げましょう!」
「タ、タカフミィーニさまは今、どちらへ⁈」
「それが、わかりません……」

あぁ、どうしましょう⁈ このお屋敷は団長の軍隊に囲まれているのね。タカフミィーニさま、危険です!  今はお戻りにならないでください!

「アプレン、隠れて。わたくしが投降すれば軍隊も撤収するでしょう。その後で逃げるのよ!」
「そんなのダメです! 僕も一緒がいい!」

わたくしは思わずアプレンを抱きしめた。

「ありがとう、アプレン。でもお願い。これ以上巻き込みたくないの」
「ヤダ、ヤダ、ヤダーー! うわーん!」
「……大好きよ、アプレン」
「ララコスティさまあ、うわーん!」

その時だった。騒がしい物音とともに複数の騎士が部屋へ乱入してきた。抵抗する団員を騎士たちが乱暴に突き飛ばし、肩章の装飾がひときわ煌びやかな上級騎士と思われる男が、わたくしの前に立ちはだかった。

「ふん! 我らに歯向かうのか⁈ 愚かなことだ」
「乱暴はよしなさい! わたくしがララコスティです。さあ、捕まえなさい。それでここから撤収するのよ!」
「お前がゼアス家の召使いだな? 私は団長のセェレだ。……で、タカフミィーニはどこに居る?」
「このお屋敷にはいらっしゃいません」
「仕方ない。おい、探せ!」
「ははっ!」

騎士たちがありとあらゆる部屋へ散らばっていった。

「もう一度聞こう。奴はどこだ?」
「存じ上げません!」
「チッ! おい、この奴隷を確保しろ!」
「ははっ!」

騎士たちが一斉にわたくしに襲いかかり、腕を掴んで縄で縛ろうとした。

「やめろーー!」

アプレンが騎士に体当たりをした。

「な、何だ、この小僧⁈」
「その子は関係ないの! アプレン、逃げるのよ!」
「ヤダーー! ララコスティさまから離れろー!」

アプレンの抵抗も虚しく、わたくしたちは罪人のように縄を後ろ手に縛られた。

しかし、ここで奇跡が起こった──。

「団長殿、大変です! この屋敷に軍隊が攻撃を仕掛けています!」
「何だと⁈ 馬鹿な⁈ 何かの間違いだろう!」

ドカドカドカッと大きな物音が聞こえる。しばらくすると別の騎士が伝令に来た。

「わ、我々は全滅です! ほぼ捕まりました!」
「誰がそんな勝手なことを!  私が騎士団のトップであるぞ!」
「敵の大将は……タ、タカフミィーニ副団長!」
「なっ⁈」
「えっ⁈」

コツコツコツと足音がする。扉が開くと夕陽に照らされたあの御方が神々しく登場した。

「セェレ元団長、貴方を反逆の罪で捕らえます」

あーあーあーっ、またしても、タカフミィーニさまだーー!