ダークグレーの制服に金色の肩章や胸の勲章、牡丹の装飾が眩しく、軍刀は儀礼剣ながらも上品さと力強さを感じさせる。つまり、超カッコいいのよ!

「タカフミィーニさま、これを!」

ゼアス家の不正が記されている書類を渡すと、彼は一読し、小さく頷いた。

「何を渡した? 何を見ている? お前、何を盗んだのだ⁈」
「フッ」

タカフミィーニさまが一瞬微笑みを浮かべたが、すぐにサラーニャに厳しい表情を向けた。

「これよりララコスティさまを保護する!」
「何だと⁈ これはゼアス家の問題だ。その召使いを引き渡してもらおう!」
「それはできない。力づくでもだ!」

騎士団が一斉に軍刀を構えた。

「おいおい、騎士団が筆頭公爵家に対してその振る舞い、無礼であろう!  越権だ!」
「全ての責任は副団長である私が取る。お引き取り願おう、サラーニャ」
「く、くそう……こんなマネしてただで済むと思ってるのか⁈ きっと後悔させてやるからな!  あ、それとララコスティ、招待状が一枚余っただろう? あれはいらん。破って捨てておけ!」

サラーニャは文句を言いながら、渋々引き下がっていった。

***

わたくしは騎士団に守られ、タカフミィーニさまのお屋敷でアプレンとともに匿われている。

「アプレン、ごめんね。巻き込んでしまったわ」
「いいんです。僕はララコスティさまについて行くと決めたんです」
「ありがとう。それにしてもタカフミィーニさまがいないと何だか不安だわ」

彼はわたくしたちがお屋敷に到着するのを見届けると、すぐにどこかへ行ってしまった。今は少人数の部隊が残ってお屋敷を警護している。

わたくしは不安な気持ちを紛らわすためにお部屋の中を見渡した。ここはモエミアンさまがお住まいになられた場所でもある。

ああ……モエ、聖女を託すと言ったけれど、わたくしにできるかしら? そんな才能なんてないわ。

と思いながらも、自分なりの「お祈り」を試みる。

『この国が安定し平穏無事でありますように……』

こんな感じかしら?

すると、ハッと頭の中に前世の記憶が映像で蘇った。

炎の前でお経を唱えるタカフミィーニさま……いえ、タカフミ。こ、これは護摩業だ。わたくしも怨敵を倒すために祈る「調伏法」を唱えている。そして周りにはモエ……アヤーナ? あ、あなたってアヤなの⁈ それにモモシャリー、サラーニャですって⁈ 何なの⁈ 前世ではわたくしのお仲間だったってこと⁈ まさか⁈

混乱した心の乱れで映像が途切れてしまった。

と、その時──。

「ララコスティさま、外が大変なことになっています!」
「えっ? どうかしたの、アプレン」
「騎士団がお屋敷を囲んでいます。ララコスティさまの身柄を引き渡すよう要求しているみたいで……さあ、お逃げになる準備をしましょう!」

わたくしは何が起こっているのか理解できない。

「どういうことかしら⁈ 騎士団同士が争っているってこと⁈」