そう感傷に浸っていると、侍女のミュウが現れた。彼女は綺麗なウェイトレス風のリボンとフリルの衣装を手に持っている。

「ララコスティさま、お久しゅうございます!」
「ミュウ! 会いたかったわー!」
「ご苦労なさってるんですね。そんなボロボロの服で……ううっ……せめてこれを」
「ミュウ……ありがとう。でも本当にいいのかしら?」

すると、爺がそっとわたくしの肩に手をかけてくれた。

「いくら労役とはいえ、その格好ではゼアス家にも失礼です。さあ、それを持ってお帰りなさい」
「……爺、わかったわ。行こう、アプレン」
「は、はい。では失礼します」

帰る際、アヤーナが騎士団が警護している門まで見送りしてくれた。

「お姉さま、この招待状を同級生のお屋敷に配って回っているの?」
「う、うん」
「それは大変! ねえ、私も手伝うわ。あ、そうだ。馬車を手配しましょう」
「馬車って⁈」
「お姉さまもせっかく学友に会われるのだから、素敵なドレスとお化粧をバッチリ決めて参りましょうよ!」
「アヤーナ、気持ちはありがたいけど遠慮しておくわ。だってこれは労役なんですもの」
「でも……」
「わたくしがお屋敷に寄るなんて甘かったわ。でも何だか安心したわ。ありがとう、アヤーナ」

***

あれから三日間、足が棒になるくらい歩いてどうにか三十人の同級生に招待状を配った。今のわたくしに対して驚きと蔑み、小馬鹿にする言動が多かったけれど、中には慰めの声をかけてくださる方もいて心が救われた気分になった。

そして、久しぶりに宮殿へ奉仕に行く。ルイ家で貰った服を着て……。

「モモシャリーさま、全員に招待状をお渡しいたしました」
「あら、ご苦労さん……って、あなた何、その可愛い子ぶった衣装は⁈」
「あ、これは頂いたものです。前の服はかなり汚れていたのでお洗濯しています」

すると突然、サラーニャに胸ぐらを掴まれた。その馬鹿力で服が「ビリッ」と破れる音が聞こえる。

な、何するのよ! あんたぁ!

「ララコスティ、その格好で行ったのか!」

バチーン! と問答無用で平手打ちが飛ぶ。

こいつ、どうかしてる!

鼻血が吹き出したが、痛みは全く感じなかった。

「滅相もございません。お言付け通りの服装で参りました」

モモシャリーは薄笑いを浮かべながらも冷酷な目を向ける。

「ふーん。じゃあ、その衣装は誰から頂いたのかしら?」
「これはルイ家で頂いたものです」
「ルイ家だと⁈ 嘘をつくなー!」

バチーン! とまたもや平手打ちが飛ぶ。 

全然、痛くも痒くもないわ! お好きなだけ殴りなさい! この馬鹿女が!

「ルイ家は没収されて無人のはずだけどー?」

「いえいえ、執事や召使いが在宅でございましたが?」