小汚い召使いの服で申し訳ないと思いつつ、我が家のソファに座り、アプレンとともにお紅茶を頂く。

「ああ、美味しいわ! これよ、この味!」

ふと、アプレンがもじもじしているのに気づいた。

「アプレン、遠慮はいらないわよ」
「あ、いえ……僕は、その……恐れ多いです」
「お姉さま、この子は?」
「わたくしの仲間で、アプレンって言うの」
「そう。ボクもお紅茶どうぞ」
「あ……は、はい」

アヤーナに勧められたアプレンは意を決してお紅茶を口にする。

「う、うまーい! 初めて飲んだあ!」
「うふふ、でしょう!」

アヤーナとアプレンは顔を見合わせて笑った。

さて、わたくしは妹に聞きたいことが山ほどある。

「で、このお屋敷はなぜ騎士団が警護してるの? 父上、母上、兄上は今、どこで何をしてるの? なぜ貴女だけがここにいるわけ⁈」
「お姉さま、そうまくし立てないで」
「だってぇ」
「私が知ってることは少ないのよ。爺なら何か知ってると思うけど」
「え、爺が居るの⁈」

爺とは、ルイ家に古くから執事として仕えていたご老人で、今はご子息に業務を引き継ぎ隠居していたはず……。

そこへコツコツと足音が聞こえてきた。やがて扉がゆっくりと開く。

「やはり、ララコスティさまでしたか」
「爺ーっ!」

思わず叫んだ。幼少の頃から色んなことを教えてもらい、時には厳しく、時には優しく、わたくしの成長に欠かすことのできない大恩人なのです。

「貴女はここに居てはいけませんよ。労役中なんですから」
「労役?」
「そんな事も分からないのですか? 王家に婚約破棄された原因は貴女にもある。だから罰として『宮殿へご奉仕』という労役をなさっているんでしょう」
「そ、それは申し訳ございませんでした……え? あの、ルイ家は公爵位剥奪の上、国外追放処分って聞きましたが⁈」
「……そんな処分は下っていません。御主人さまは国王命令で隣国へ赴任されています。極秘の任務だそうです」

──国外追放ではない⁈ だったらなぜモモシャリーは追放って言ったの? 意地悪? それとも誤解?

「息子からの知らせによると首尾は上々。近いうちにお戻りになられるかと」

……な、何なのよ、一体!

「ねぇ爺、騎士団がお屋敷を警護しているのはなぜ?」
「それはご主人さまがお頼みになられたこと。お留守番のアヤーナさまと侍女のミュウだけでは、お屋敷が守れないと思ったのでしょう。まぁ、私も呼ばれましたが」
「そうなんだ……」

漠然とだけど、なんだか安心した。ルイ家に迷惑をかけていない。婚約破棄の罪はわたくしが労役すればいいだけなの。そうよ、わたくしが頑張れば済むんだわ!