「なんと!」
タカフミィーニさまが片膝をついて礼を取る。
「ララコスティさま、よかったです。思い切ってキスした甲斐がありました」
「えっ⁈」
キ、キス⁈ キスしたの⁈ そうだったの⁈ あっ、そうだった。キャーーッ!
途端にわたくしの頬は火が出るくらいに紅潮していく。
恥ずかしい! こんな真っ赤なお顔、見られたくないわ!
わたくしはベッドから起き上がるや否や、タカフミィーニさまに背を向けた。
「タカフミィーニさま、シンクリア王子並びにゼアス家のこれまでの仕打ち、絶対に許しません!」
「お気持ちはよくわかります」
「このままでは済まさない。復讐よ!」
「ララコスティさま?」
「今までありがとう、タカフミィーニさま。では、ご機嫌よう!」
颯爽と奴隷部屋から出ようとするわたくしを、タカフミィーニさまが扉の前でお止めになった。
「お待ちください! どうなさるというのですか⁈」
そりゃあ、殴って暴れてこの宮殿から出て行くまでですわ! ……と彼の前では言えないよね。
「モモシャリーたちに、ご挨拶して此処から出て行きます」
「出て行く? どちらへですか?」
「両親が追放されている国へ参り、今後のことを考えますわ」
「ララコスティさま、まずは落ち着いて聞いてください」
「……?」
タカフミィーニさまは、扉の向こうで見張っているアプレンに異常がないか確認する素振りを見せる。そして誰もいないことを見極めた上で小声で話された。
「ご両親さまは確かにこの国におられませんが、ルイ家のお屋敷は厳重な警備のもと存在しています」
「ど、どういうことでしょう? 所領は没収されたはずでは?」
「騎士団は警備の指示だけで詳細は知らされていません。ただ今回の公爵家の争いごと、ゼアス家の仕掛けた陰謀はもっと大きなものではないかと……」
「わたくしが……その、悪役令嬢だったからルイ家は国外追放されたのではないというのですか?」
「まさか。それに貴女は悪役令嬢ではありません」
いえ、わたくしはこの国の次期国王であるシンクリア王子と婚約しておきながら、前世の想いを引きずって貴方に恋してたのよ。不届きな女と言われても仕方ないのよ?
「とにかく、今は我慢するのです」
「我慢ですって⁈」
「幸い貴女はゼアス家の公務室に出入りできます。ここで何か証拠を掴むのです。彼らが何を企んでいるのかを!」
でも正気を取り戻したわたくしに、はたして我慢できるかしら?
「ララコスティさま、今がチャンスです。しばらくは召使いのふりをなさってください」
「えーっ?」
彼に両手を握られ、懇願されてしまった。
ああ、そんな目でわたくしを見つめないでくださらない? お恥ずかしいですわ。お化粧もしてないのに。あーあー、わかった、わかりましたよ!
「そうですね。これはルイ家の面目に関わること。召使いのふりでも何でもやってみますわ!」
タカフミィーニさまが片膝をついて礼を取る。
「ララコスティさま、よかったです。思い切ってキスした甲斐がありました」
「えっ⁈」
キ、キス⁈ キスしたの⁈ そうだったの⁈ あっ、そうだった。キャーーッ!
途端にわたくしの頬は火が出るくらいに紅潮していく。
恥ずかしい! こんな真っ赤なお顔、見られたくないわ!
わたくしはベッドから起き上がるや否や、タカフミィーニさまに背を向けた。
「タカフミィーニさま、シンクリア王子並びにゼアス家のこれまでの仕打ち、絶対に許しません!」
「お気持ちはよくわかります」
「このままでは済まさない。復讐よ!」
「ララコスティさま?」
「今までありがとう、タカフミィーニさま。では、ご機嫌よう!」
颯爽と奴隷部屋から出ようとするわたくしを、タカフミィーニさまが扉の前でお止めになった。
「お待ちください! どうなさるというのですか⁈」
そりゃあ、殴って暴れてこの宮殿から出て行くまでですわ! ……と彼の前では言えないよね。
「モモシャリーたちに、ご挨拶して此処から出て行きます」
「出て行く? どちらへですか?」
「両親が追放されている国へ参り、今後のことを考えますわ」
「ララコスティさま、まずは落ち着いて聞いてください」
「……?」
タカフミィーニさまは、扉の向こうで見張っているアプレンに異常がないか確認する素振りを見せる。そして誰もいないことを見極めた上で小声で話された。
「ご両親さまは確かにこの国におられませんが、ルイ家のお屋敷は厳重な警備のもと存在しています」
「ど、どういうことでしょう? 所領は没収されたはずでは?」
「騎士団は警備の指示だけで詳細は知らされていません。ただ今回の公爵家の争いごと、ゼアス家の仕掛けた陰謀はもっと大きなものではないかと……」
「わたくしが……その、悪役令嬢だったからルイ家は国外追放されたのではないというのですか?」
「まさか。それに貴女は悪役令嬢ではありません」
いえ、わたくしはこの国の次期国王であるシンクリア王子と婚約しておきながら、前世の想いを引きずって貴方に恋してたのよ。不届きな女と言われても仕方ないのよ?
「とにかく、今は我慢するのです」
「我慢ですって⁈」
「幸い貴女はゼアス家の公務室に出入りできます。ここで何か証拠を掴むのです。彼らが何を企んでいるのかを!」
でも正気を取り戻したわたくしに、はたして我慢できるかしら?
「ララコスティさま、今がチャンスです。しばらくは召使いのふりをなさってください」
「えーっ?」
彼に両手を握られ、懇願されてしまった。
ああ、そんな目でわたくしを見つめないでくださらない? お恥ずかしいですわ。お化粧もしてないのに。あーあー、わかった、わかりましたよ!
「そうですね。これはルイ家の面目に関わること。召使いのふりでも何でもやってみますわ!」