途中から夢を見ていたの。ここはどこかしら? 見覚えのある座敷で、くつろいでいるわたくしがいる。目の前にはタカフミィーニさま、そして隣にはモエミアンさま……。ん⁈ 違うわ、全てがどこか違う国の物……これは前世の記憶⁈ そう、あなたはわたくしと愛し合った男、タカフミ! そしてあなたは大親友、モエ!

──ハッ!

不意に意識が戻った。

「おおっ、お目覚めになられましたか!」

えーと、どういう状況なのかしら? 憧れのタカフミィーニさまが間近にいらっしゃるし……。

「ララコスティさま、お水を飲まれますか?」
「……あ、ありがとうございます。いただきます」

これは夢か現実なのか、どっちなの? わからない……それにしてもなんて薄汚いお部屋だこと。それからわたくしの服装も何よ、まるで召使いじゃない!

「先程は大変なご無礼を。申し訳ございません」
「い、いえ……」

うん? なんだっけ?

お水を口にするため起き上がろうとしたわたくしの背中をタカフミィーニさまが支えてくださった。

キャーッ、背中を触られてるうー!

「タ、タカフミィーニさま、わたくし……」

あぁ、もじもじしちゃって、つい可愛い子ぶってしまったわ! でも好きな殿方の前ですもの、仕方ないわよね! つか、お化粧したーい!

「何か思い出されましたか?」
「あの……遠い昔のことを……」
「昔のこと……ですか? そう言えば母も時々奇妙な話をされてました。聞いたことのない国のことです」
「そうですか。実はその国で……」

おっと、うっかり前世の話をするところだった。これは軽々しく言うことではないのよ。

「ララコスティさま?」

うーん、なんだかモヤモヤしてきたわ……段々これが現実だと思えてくる。わたくしは確か公爵家のララコスティ……そして今は奴隷……? なぜ奴隷なのよ⁈

暫く意識を集中させて考え込んだ。すると何か吹っ切れた感覚に陥り、頭の中でぐるぐると記憶が呼び戻る。

「改めて申し付ける! ララコスティ、そなたとの婚約を破棄する!」

「私が……ゼアス家が面倒みたいと思います」

「ふん、いつまでもご令嬢気分でおっては困るな。いいからこっちへ来るんだ!」

か、階段から落ちるわ! 死ぬ……これは殺人? 殺人なの⁈

あっ、あぁっ! お、思い出した! 思い出したわっ!

わたくしは全てを思い出した。同時に怒りで体が震える。

おのれぇ、わたくしを誰だと思ってるのか!  許さない、絶対に許さないわ! シンクリア王子にモモシャリー、そしてサラーニャアアァ!

「ラ、ララコスティさま、大丈夫ですか⁈」
「タカフミィーニさま。わたくし、記憶が戻りましたの!」