「どういう意味っ……!」

私の言葉を(さえぎ)るように凛也さんが私の身長に合わせて少しだけ屈んだ。


「とても良い演奏でしたよ。二週間お疲れ様でした」


触れられてもいないのに、何故か自分の顔が真っ赤になったのが分かった。

多分だけれど、少しだけ何かを期待していた……いやいや、そんなわけはないはずで。

「想乃さん?」

「……何でもないです」

夜風が気持ちよく吹いていて、この熱くなった頬を早く戻してほしいと願ってしまう。

その後の帰り道は、ずっと心臓が速なったままだった。

家の近くに着いて凛也さんと別れると、突然凛也さんが「あ!」と何かを思い出したようだった。

「凛也さん?」

「想乃さん、来週の土曜日楽しみにしていますね。10時に迎えに行きます」

「っ!」

それだけ言って、凛也さんは家の中に入っていってしまう。


「あの人、私を振り回すのが上手すぎない……?」


そう呟いてしまった声は凛也さんには届かなかった。