バーからの帰り道、凛也さんが私の演奏の感想を伝えてくれる。

「序盤の演奏から上手く弾けていたので、観客も惹かれていたと思います。それに……想乃さん?どうしました?」

私がついニコニコと笑顔で凛也さんの顔を見ていたことに気づかれてしまう。

「あ、えっと……無事終わって、こうやって凛也さんと帰れていることが嬉しくて。実は昨日の夜、終わった後に凛也さんに褒めてもらうところを想像してたので……」

私はそう言ってしまった後に、とてつもなく恥ずかしいことを言ったことに気づいて、動揺してしまう。

「いや、えっと、そういう意味じゃなくて……なんていうか『上手く演奏出来たな』的な格好良い感じでのイメージで!」

焦って余計に意味が分からないことを口走ってしまう。

そんな私の様子を見て、凛也さんが吹き出すように笑った。

「あはは!相変わらず面白いですね、想乃さん」

「……褒められていないことは分かります!」

「褒めてますよ。でも……想像の僕はそれだけですか?」

「っ!?」

凛也さんがそう言って、歩いていた足を止めてこちらをじっと見ている。