「次は僕に慰めさせて下さい。無理に涙を拭うのではなく」

「これは感動の涙で……!」

「それでも、隠さないで下さい。我慢しないで下さい」

凛也さんがそっともう一度、私の頬を優しく撫でた。


「もっと想乃さんの色んな表情を見せて」


「っ!」


こんな時だけ敬語じゃなくなるのは、あまりにもずるくて。

胸がキュゥっと締め付けられてしまう。

凛也さんは私の気持ちなんて知らずに、「そろそろ想乃さんも家に帰らないとですね」と時計を見て言った。

そして、凛也さんは玄関でいつも通りこう言うのだ。


「では、また明日」


その言葉にまた胸が締め付けられた気がした。