私の顔を見て、凛也さんがくすくすと笑っている。

「ほら、早く」

「む、無理です……!」

「じゃあ、要らないんですか?」

「欲しいですけど、それは絶対出来ません!」

その時、リビングから電話の呼び出し音が鳴り響いた。

「時間切れですね」

凛也さんが私の手を(つか)んでチケットを握らせる。

そして、凛也さんはリビングに戻っていってしまう。

私はそのまましばらく速なった心臓の音を聞きながら、動くことが出来なかった。