校内1のモテ男子といっても過言ではない青倉。

知り合ったのは中2だが、当時彼は生徒会の最年少役員を務めていたため、1年生の頃から名前は知っていた。


先輩に可愛がられ、先生にも頼りにされて。
進級後も、新しく入ってきた後輩に慕われて。

高校では部活に専念してるみたいだけど、部員の相談に乗っているのを何度か見かけたことがあった。


でも、そういう類の噂は1度も耳にしたことがないんだよね。


同居を許可してくれたから彼女はいなさそうだけど……恋愛に興味が薄いのかな。


視線を戻して廊下を歩いていると、前方にコスプレ衣装を着た男子2人組が現れた。

1人は執事風の衣装で──もう1人は、王子様風の衣装。



「瀬那っ、ここ入らない?」

「え? でもここさっき入っ……」

「か、買い忘れたものがあってっ」



瀬那の背中を押して、再度ケーキ屋さんに入る。


目を疑った。
そっくりさんであってほしいと願った。


だけど──。



『あれ? 今日は耳栓しなくていいんだ?』



記憶の中の表情と一致した瞬間、悪寒が走った。


どうして。なんで。
やっと離れられたと思ったのに。

私はいつまで──あなたに縛られなきゃいけないの。


耳をつんざく品のない笑い声が遠ざかるまで、瀬那の腕にしがみついていた。