男子ではなく、1人の人間として。

交流してきたこれまでの日々を振り返る。



『ぶつかったお詫びに手伝うよ』
『修理したけど、もし外れたらすぐ言って』

『寝つくまで一緒にいようか?』
『弁当忘れてたよ』

『もしまた不安になったら、いつでも頼っていいからな』
『足痺れてるでしょ? 休んでていいから』

『もー、そんなに怒んないの。可愛い顔が台無しだぞー』
『なぁ、ももちゃん半分貸してくれない?』



真っ先に思い浮かんだのは、優しく頼もしい姿。

最近は意地悪や無茶振りが目立つけれど、嫌悪感を抱いたり、拒絶反応が出たことは1度もなかった。


そっか。私……青倉に惹かれているんだ。



「……こんな気持ちになるの、もうしばらく先だと思っていたのに」

「お、その様子だと……?」

「うん。でも、おかしくないかな。トラウマも癒えてないのに」

「全然。希歩、恋はするものじゃなくて、気づいたらしてるものだから。克服しないと好きになっちゃいけないなんてルールはないんだよ」



持論を披露したのち、瀬那は「大丈夫!」と手をグッドマークにして締めくくった。