しばらくすると、荒れていた呼吸が徐々に落ち着きを取り戻していった。



「マジごめん、ありがとう」

「いえいえ。災難だったね。この季節でもいるんだ」

「あぁ。山越えたからちょっとくらいサボっても大丈夫だろうって油断しちまった。やっぱ掃除はこまめにやらねーとな」



「自業自得だ」と自虐的に笑い、隅に積まれた座布団を私の布団の隣に並べ始めた。

水族館に行った時と同じ笑い方。

だけど、声はハリがなく、顔もまだ若干強張っている。



「これ、持ってきたの?」

「あぁ、うん。テスト終わった日に、冬物と一緒に。真っ暗なほうがいいよね?」

「いや、点けていいよ。つーか点けてほしい。今は明るいほうが安心するから」



早口で即答し、チラッチラッと目を泳がせている。

そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。毎晩寝る前にほうきで掃いてるから。



「じゃ、消すね」

「はいよー」



寝床が完成したところで間接照明を点け、天井の電気を消した。

温かみのあるオレンジ色の光が壁と障子をぼんやりと照らす。