だとしたら、なんらかの理由で部屋で眠れなくなった、しかないよね。


ベッドが壊れた、とか? あとは、エアコンが故障した、とか。
もし異臭を放ってたら寝つけないだろうし。


それとも、幽霊が出た、とか……!?



「……出たんだよ」

「え?」

「っあ、あいつが、出たんだよ……!」



叫びたい気持ちを抑えるように寝具をギュッと抱きしめた青倉。

青倉がそう呼ぶのは、今のところ、梨子ちゃんと……。



「寝ようとしたら、カサカサって音がして、嫌な予感がして机の下覗いたら……っ。急いでスプレー取りに行ったんだけど、き、消えててっ」

「わかった。とりあえず入って」



このままでは家族が起きてしまう。

部屋に入れて座らせ、背中を擦って宥める。


厄介者、天敵、恐怖の対象。

あまりにも嫌われすぎたせいで、とうとうアルファベット1文字で表されるようになった“あいつ”。


動けなくなるくらいパニックになってたとは聞いていたけれど……震えるほど苦手だったなんて。

先生が抱きしめていたのも納得だ。