嵐が去ったように、部屋中に静寂が訪れる。
「ごめんな、うるさくて」
「ううん。何か、秘密でも握ってるの?」
「あぁ。あいつ母さんの口紅折っちゃったんだよ。隠れて使おうとしたら落としたらしくてさ。新品だったからどうしよ〜って泣きついてきて……」
躊躇いもなく暴露する彼から抱き枕を受け取る。
怒られるのが怖くて内緒で弁償しようとしたが、お金が足りず。青倉にお願いして半分立て替えてもらったのだそう。
小学生でお化粧かぁ。
まだ早い! って止められそうだけど、背伸びしたくなるお年頃だもんね。
「よし、そろそろ再開しますか。次は何やる?」
「英語。青倉は英語得意だっけ?」
「まぁ、できるほうではある。けど、今回の文法あんま自信ねーんだよな。もし行き詰まったら力借りてもいい?」
「もちろん。私で良ければ」
あえて梨子ちゃんが口にしていた内容には触れず、英語の教科書を開いた。
*
「──こっちがこめへんで、こっちがのごめへんね」
「ふむふむ。このPみたいなやつは、なんだっけ?」
「それは、ふしづくり、だったと思う」
「ごめんな、うるさくて」
「ううん。何か、秘密でも握ってるの?」
「あぁ。あいつ母さんの口紅折っちゃったんだよ。隠れて使おうとしたら落としたらしくてさ。新品だったからどうしよ〜って泣きついてきて……」
躊躇いもなく暴露する彼から抱き枕を受け取る。
怒られるのが怖くて内緒で弁償しようとしたが、お金が足りず。青倉にお願いして半分立て替えてもらったのだそう。
小学生でお化粧かぁ。
まだ早い! って止められそうだけど、背伸びしたくなるお年頃だもんね。
「よし、そろそろ再開しますか。次は何やる?」
「英語。青倉は英語得意だっけ?」
「まぁ、できるほうではある。けど、今回の文法あんま自信ねーんだよな。もし行き詰まったら力借りてもいい?」
「もちろん。私で良ければ」
あえて梨子ちゃんが口にしていた内容には触れず、英語の教科書を開いた。
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「──こっちがこめへんで、こっちがのごめへんね」
「ふむふむ。このPみたいなやつは、なんだっけ?」
「それは、ふしづくり、だったと思う」