嵐が去ったように、部屋中に静寂が訪れる。



「ごめんな、うるさくて」

「ううん。何か、秘密でも握ってるの?」

「あぁ。あいつ母さんの口紅折っちゃったんだよ。隠れて使おうとしたら落としたらしくてさ。新品だったからどうしよ〜って泣きついてきて……」



躊躇いもなく暴露する彼から抱き枕を受け取る。


怒られるのが怖くて内緒で弁償しようとしたが、お金が足りず。青倉にお願いして半分立て替えてもらったのだそう。


小学生でお化粧かぁ。

まだ早い! って止められそうだけど、背伸びしたくなるお年頃だもんね。



「よし、そろそろ再開しますか。次は何やる?」

「英語。青倉は英語得意だっけ?」

「まぁ、できるほうではある。けど、今回の文法あんま自信ねーんだよな。もし行き詰まったら力借りてもいい?」

「もちろん。私で良ければ」



あえて梨子ちゃんが口にしていた内容には触れず、英語の教科書を開いた。







「──こっちがこめへんで、こっちがのごめへんね」

「ふむふむ。このPみたいなやつは、なんだっけ?」

「それは、ふしづくり、だったと思う」