「お父さんからは、転校を強く勧められたんだけど……それだと、なんか負けたような気がしてさ。なんで私が転校しなきゃいけないの! って」

「そうだよな。嫌がらせは、止んだの?」

「うん。担任以外の先生がみんな味方になってくれてね。クラスも分けてもらった。けど……」



先生の配慮により、進級時、主犯格達とは別のクラスに。

しかし、彼らは反省どころか……。


『卒業したら、好き放題暴れてやろーぜ』


放課後の教室で笑い合っているのを見た途端、身震いした。


人の命を危険に晒しておいて。

先生に見張られていて窮屈だの、自分にだけ当たりが強いだの、愚痴ばかり。


こんな血も涙もない人間に、これ以上私の学校生活を壊されたくない。


即刻両親に報告して、近所の公立中学ではなく、私立の中学に行きたいと相談。

両親のサポートを受けながら塾に通い、見事首席で入学したというわけだ。



「辛かったな」



頭をそっと撫でられる。


環境が変わって、年月が経って。少しは癒えたかなと思っていた。

けど……まだ全然、治ってなかったみたい。


とめどなく涙が溢れてくるってことは、過去に囚われているという証拠だから。