駆け寄ってきた梨子ちゃんの後ろから、秋恵さんと、ハーネスに繋がれたキュルくんがやってきた。

下校中にバッタリ遭遇し、お散歩しながら帰っていたとのこと。



「こんにちは〜。お兄ちゃんのお友達ですか?」

「え……! あぁ、えっと……」



キュルくんを抱っこして挨拶した梨子ちゃん。

この角度からは顔は見えないけど、声色と体の動きから、焦りが見える。


いがみ合っていた相手の妹に友好的な態度で来られたら、しどろもどろにもなるよね。母親もいるし。



「あ、それとも、希歩ちゃんのお友達ですか?」

「っい、いえ! 落とし物を届けただけで……っ! し、失礼しますっ!」



キラキラ笑顔の重圧に耐えきれなかったらしい。

早口で言い残した後、勢いよく頭を下げ、逃げるように去っていった。







「──英、開けていい?」

「はーい、どうぞ」



夜の11時過ぎ。

布団を敷きつつふすまに目を向けると、寝具を持った青倉が現れた。