「待ち伏せだけでもめちゃめちゃ怖いのに、教室にまで押しかけてくるって……」

「……ほんとに、全部聞いたんだ」

「あぁ。汗かいてポカポカしてたのに、一瞬で鳥肌立った。ったく、ホラーは夏だけにしてくれよ」



ブルルッと体を震わせた後、「怖かったな」と共感してくれた。



「気づけなくてごめん。もしまた何かあったら、俺にも言っていいからな」

「いいの? 部活、あるんでしょう?」



もう1つの、口止めしていた理由。

秋恵さんから、放課後以外にも、週に数回朝練があると教えてもらっていたため。

人がいい青倉のことだから、遅刻してまで送り届けるんじゃないかなって。



「忙しくない?」

「まぁ、でも、家近所だし。理由話せば多少の遅れは許してくれると思うよ。多分」

「無責任だなぁ……」

「大丈夫だよ! きっと! 可愛い教え子のピンチなんだぜ? 協力しないわけにはいかないでしょうよ」



自分で可愛いって言っちゃったよ、この人。

でも、顧問の先生とは顔見知りだし。事情を話せば、ちょっとくらいは目を瞑ってくれるかな。