渡り廊下を抜けて校舎に入ると、前方から「長門っ!」と1人の男子生徒が駆け寄ってきた。



「はぁっ、やっと見つけた。どこ行ってたんだよ」

「え、職員室だけど。急にどうしたの?」

「どうしたのって……忘れたの!? 今日昼休みにミーティングするって約束したじゃん!」

「ええっ! 今日だったっけ?」

「そうだよ! 電話かけても出ねーし、教室行ってもいねーし。迎えに来るって言われたからずっと待ってたのに……っ」



うっうっと泣きマネをする彼。

来年度の部長と副部長に決まったため、その話し合いをしようとしていたとのこと。

長門くん、部活動でも副リーダーなんだ。



「ごめん、日付勘違いしてた。これ置いたらすぐ行く。英さん、俺先に行くね」

「う、うんっ」



そう言い残した長門くんは、階段をひょいひょいと一段飛ばしで駆け上がっていった。

1度周囲を見渡して、彼の後を追う。


……よし、いないな。


非常扉の陰からこっそりと顔を出し、廊下を確認。

胸を撫で下ろして教室へと歩き出す。



「だーれだっ」