「えーと……それは、お父さんの足が治るまで、よその家で暮らせってこと?」



高校生活の折り返し地点、10月に入って早1週間。

夕食のハンバーグをフォークに刺したまま瞬きを繰り返す私に、母が「ええ」と短く返事をした。



「明日からリモートワークにしてもらうって聞いたから、少し回復したそうなんだけど……家事が全然できてないみたいでね」

「部屋が散らかってたとか?」

「……うん。こないだテレビ電話した時、背景に服とゴミが散らばってるのが見えて。これはちょっとまずいなって」



野菜スープをすくう母の顔に苦い笑みが浮かぶ。


半年前から単身赴任で地方に行っている父。

だが先月、仕事中に階段から転落してしまった。


幸い持っていたダンボールがクッションになって大怪我は免れたのだけど、足の指を骨折したため、トイレに行くのも一苦労なのだそう。

先週様子を見に行った時も、足を引きずって移動していた。


毎週手料理を振る舞うくらい料理好きだったのに、インスタント麺と冷凍食品ばかりの生活を送っていると聞いたので、気持ちはわからなくもない。