「おはよう、みんな!」
教室に、元気な声が響く。まぁ私の声なんだけど。
「おはよう、来花!」
「お!二年一組の幸せの女神が来たか!」
「もう、みんな大げさでってば~。」
まぁそうは言うものの、気分は最高!だけどね。私・有世来花(ありせ らいか)!二年一組所属!今日はゴールデンウイーク明け初めての登校日だから、みんなに会えて、とっても嬉しいな。
「有世は二年一組のムードメーカーだね!」
学級委員長の川村努(かわむら つとむ)くんが言ってくれる。
「有世が学級委員長になればよかったんじゃないのか?」
「いや、私は学級委員長なんて柄じゃないし、川村くんでよかったと思うよ。成績もいいし。」
「ありがと。オレ、今度の中間ではトップ目指してるから。」
「くは~!優等生の余裕ですか!!」
「ら、来花、来花。」
突然、可愛らしい声が聞こえてくる。声の主は私の親友の水野夏美(みずの なつみ)。
「おはよう、夏美。ほら川村くん、夏美だよ。」
「あぁ、夏美さん……、おはよう。」
「う、うん。おはよう努くん。」
実は、夏美は川村くんに絶賛片思い中。ふたりとも小学校が同じで名前呼び♡いい感じなのに、夏美ったら告らないんだよ~。そしてこれは私だけの秘密!川村くんも夏美のことが好きなんだよ!これはにやにやしちゃうよね~。
「ちょ、ちょっと来て、来花!」
突然夏美に引っ張られて、びっくりするものの、言われた通りに夏美についていく。そして、人通りの少ない廊下で、夏美は言った。
「あ、あのね、昨日、努くんが告白してくれたの。それで、つ、付き合うことに、なって……!」
え?それって……。
「両想いだったんじゃん!よかったね!」
桜咲く。なんか、ちがうか?まぁとにかく、やったね!


♦♦♦♦♦
今日は人生で最悪な日。今すぐ逃げ出したい。なんなら、足も手の小刻みに震えている。
「えー、今日は転校生を紹介する。」
ざわっ。教室の中がざわめく。『転校生』……とはぼくのこと。ぼくの名前は無世律斗(ないせ りつと)。どこにでもいる中学生。
「えー、転校生ー?私立中学にもくるの。」
「あったりめぇだ。」
「え?何?女子⁉かわいいかなぁー?」
残念。女子ではない。
「お前、彼女いるだろ。不倫するつもりか?」
おっと、そいつはいけないな。
「おーい、無世。入って。」
担任の佐清(さきよ)先生に言われて教室に入るーー前に、ひときわ大きな声が聞こえた。
「クラスメイトが増えていいね!」
な、なんだこの声は。このクラス、なんだか騒がしいな。ぼく、とてもなじめなさそうだよ。
「えー、男子じゃん。」
「どっちでもいいだろ、女子でも不細工なやついるし。」
「おーいおい、不細工とかいうなよ。」
「はい、みんな。喋るのやめて。無世くん、自己紹介をどうぞ。」
「……、無世律斗です。国語が……多分得意。よろしくお願いします。」
自己紹介完了。第一関門クリア、だな。
「じゃあ席は有世の隣な。有世、よろしく。」
……有世?ぼくとは正反対の名前だな。
「よろしくね、無世くん。」
その女子ー有世さんから声をかけられる。どきん、と心臓が飛びはねる。な、なんだこの気持ち……。気づいた。
この女子、さっきひときわ大きな声でしゃべっていた女子だ。