次に思い浮かんだのは、入学して最初に席を隣合わせた同じ学科のクラスメート、峰岸一真(ミネギシ カズマ)。



彼の日本人離れした甘いマスクは、入学当初からクラス中の女の子の注目の的だった。



まったく意識していないと言えば嘘になるが、もともとあの手の濃い顔は好みじゃない。



シャツの襟を立て、はだけた胸から覗くクロムハーツのネックレス。



薄い耳たぶを際立たせる重ね付けのピアス。



そして、都会人特有の馴れ馴れしい態度にも、うんと警戒していたつもりだった。



しかし、生まれて初めて親元を離れ、右も左もわからない大都会へやってきた十代の女の子にとっては、見るもの聞くものすべてが新鮮で刺激的だった。



キャンパスを歩いてる女の子は皆、自分よりきれいで、お洒落で、イケてるように見えた。



お国訛りはもちろん、次々と襲いくるコンプレックスと懸命に闘っているような毎日だった。