薄い薄い紫のような、ピンクのような、白々とした空に蒼い帳が降り始めると、高速湾岸線にオレンジ色のナトリウムランプがポツリポツリ灯り出した。



修司が運転するシルバーの四駆は、東京湾の埋立地にある遊園地へと向かっている。



大きく背中の開いたニットワンピで華奢なからだを包み、FMから流れるヒップホップに合わせて助手席でからだを揺すっているのは、修司の彼女、木谷梨花子(キタニ リカコ)。



今春、短大を出て、某外資系商社に勤め始めた梨花子は、同い年の美里より二つ三つは年上に見える。



「おい」



修司が一言かけると、バッグから煙草を取り出し、いかにも手慣れたように一服吸った後で彼の口に再びそれをくわえさせた。



運転席の後ろに座っていた美里は、その一部始終を目で追うと、ふいに息苦しさを覚え、視線を外した。