美里は図書館の君を目で追い続けた。
大人の男性を感じさせる落ち着いた物腰、髪をかき上げる長く美しい指、ときおり眼鏡を外して窓からキャンパスを見下ろす涼し気な眼差し…。
しかし、図書館の君は最後まで図書館の君でしかなかった(つまり名前さえ知ることもなく、その恋は一方的に終局を迎えた)。
初めて図書館以外の場所で彼の姿を見かけた時、隣にはきれいな女の人がいた。
そして、美里の目の前で、ごく自然に手を繋いだ。
ショックを通り越して、見ているこっちが幸せな気分になるくらい、すごく素敵なカップルだった。
つい数日前の出来事である。