それから二時間―



麻雀大会はとっくに始まっている。



悪戦苦闘の上、美里の方もようやく計算通りのビーフシチューを完成させた。



ほんの少し、ジャガイモが煮崩れてしまったけど…



最後の仕上げに入れた一片のビターチョコを木ベラでそっとかき回し、おたまですくったソースをペロリとなめた。



うん、オッケー。



磨り硝子の引戸の向こうからは、麻雀のパイをジャラジャラかき回す音や、笑い声、叫び声がひっきりなしに聞こえてくる。



やっぱ、この季節に煮込み料理はまずかったかなぁ…



美里はキッチンの片隅にある丸椅子に座り、汗だくの顔をハンカチで押さえ、念入りに化粧直しをしていたが、ときおり隣の部屋の話し声が小声になると、思わず耳をそば立てた。