美里とこうして時々合うようになっても、賢は友達とのつき合いをおろそかにしなかった。



自分が優位に立っているという余裕もあってか、美里には彼のそういう所がかえって好ましく感じられた。



「そうよねぇ。今どき、麻雀大会ってのもどうかと思うけど、確かに男同志の約束は大事よね」



美里があっさり身を引くと、賢は頭をかきむしって悔しがった。



その姿があんまり微笑ましくて、美里はつい余計なことを口走った。



「そうだ。どうせ徹夜なんでしょ?お夜食でも作りにいってあげよっか」



調子に乗ってつけ加えたその一言が、二人の始まったばかりの淡い関係に決定的ダメージを与えるような、とんでもない事態を招くことになろうとは、そのときの美里はまだ知るよしもなかった。