はじめに思い浮かんだのは“図書館の君”。



大学生活も早三年目を迎え、卒論準備のためにようやく図書館通いを始めた美里が、ほんのりと恋心を抱いていた大学院生だ。



山のように積み上げた古文書を抱え、書庫から出てきた彼と鉢合わせしたのがそもそもの始まりだった。



『ごめん。大丈夫?』



そう言って手を差し伸べてくれた彼と目が合った時、世界が一瞬止まったような気がした。



幼い頃に胸をときめかせた白馬の王子様がそこにいた。