「で、一回戦はいつ?」
「明日」
「明日は無理だなぁ。でも、次の試合は応援に行くから。明日は絶対勝ってね」
「み、美里さん…」
感激のあまり、賢の顔はグシャグシャに崩れた。
あ、これ…か。
好きだというはっきりとした意識もないのに、つい誘われるまま会ってしまう理由は、ただのなりゆきや退屈しのぎだけではない。
自分を一歩引いた所に置きつつも、その溢れる想いを隠すことなく、飾ることなくぶつけてくる賢に、決して低いとはいえないプライドをくすぐられるためだ。
いや、たんに、自分の思わせぶりな言動一つでこんなに単純に喜ぶ男がいるんだという快感を味わいたかったのかもしれない。