美里が薄いティーカップにそっと唇をつけた時、アイスコーヒーの氷をストローでカラカカラ回していた賢がふと手を止めた。
「今度、修司のツレでスゲー豪腕ピッチャーが入ってくれることになってさ。
うちは守りがネックだったんだけど、これで今度の大会、結構いい線いくと思うんだ」
賢はそう言うと、反り上がった鼻の穴をピクピク動かし、再びストローをカラカラ回し出した。
賢が鼻の穴をピクピクさせるのは、虫の話か野球の話をする時と相場は決まっている。
そんな時、賢はまるで何か宝物を見つけた子供のように嬉しそうに顔を輝かせるのだ。
美里の形のよい唇から白い歯がこぼれた。