あれから二ヶ月―
それが偶然ではなく、必然であったという事実を思い知らすべく、男は頻繁に美里の前に出没するようになり、その度に彼女の心拍数を乱した。
自ら声をかけることもなく、まして危害を加えることもない。
ただ、美里の驚き戸惑う表情を愉しんででもいるように、絶妙なタイミングで眼鏡の奥をキラリと光らせ、だらしない唇をさらに緩めるのだった。
もう取り乱さない。
こんなやつに絶対屈しないから!
無視を決め込んだ美里は、瞼の裏にこびりついている男の残像を振り払うべく、必死で何か別のことを考えようと試みた。