しかし、それは美里の努力でも才覚でもなく、小さい頃に遊んでもらった近所のお姉さんとよく似ていたというだけのことだった。
顔だけではない。
声や仕草まで似ているらしい。
美里を見る度、そのお姉さんに優しくされた記憶が甦るというのだ。
美里はその偶然をとっかかりに、少女と仲良くなれた。
それまでは、がんばってもがんばっても報われず、空回りばかりしていたのに、こんなささやかな偶然が心を開くきっかけになるのだということを知った。
子供達は本来、自分で立ち上がる力を潜在的に秘めている。
わたしはその可能性をただ信じ、一つでも多くのきっかけを提供し続けるだけの、ちっぽけな一人の人間でしかないのだと…
入所当時から、いや、この道に進むと心に決めてから背負ってきた分不相応な重い荷が外れ、とてもリラックスした敬虔な気持になれた。
それが、初めてこの仕事をもう少し続けていけるかもしれないと思った瞬間だった。