懐かしい薫りで目覚めた勇介は、キッチンの冷たい床へ足を踏み入れた。



瑛子の姿はどこにも見当たらない。



コンビニでも行ったかな?



ダイニングテーブルに置いてある、赤いリボンの包みに目がとまる。



勇介はその下に置いてある便箋を手に取った。



『メリークリスマス!

昨夜は楽しかった。生まれて初めての幸せなイヴをサンキュー。

子供の頃に流行ったお菓子とか、好きだった時代劇とか、お笑いのニューウェイブ?とか…うんとくだらない話ばっかだったけど。

ケーキもワインも指輪もキスもセックスもない、とんだ間抜けなクリスマスだったけど。

勇介があたしのために流してくれた涙、勇介がしてくれた腕枕の温もり、一生忘れないよ。