「あんたが上京するつもりだって聞いて、あたしもこっちで生きてく決心をしたわ。
キャバクラ、風俗、売春。新宿歌舞伎町は十代の女の子だって女を武器に一人で生きていける街だった。
あたしはようやく小さなアパートを借り、自由を手にしたわ。
誰にも束縛されない、強要されない、自分だけの城を」
「ああ…」
「でも…あれからずっと聴こえるの」
「え?」
「その子のすすり泣く声が聴こえるの。
『助けて、誰か助けて』って。
気がつくと、その子の顔が…
あの時のあたしの顔に…」
瑛子の声が震え出した。
「あたしは夢の中で泣きながら叫んでるの。
『あたしは誰にも助けてもらえなかったわ。母親にも守ってもらえず、毎晩声を殺して泣いたわ。あんた、何甘えてんのよ!』って」