「甘ちゃんからその話聞いてヘドが出たわ。

あたしの母親は次から次へと男をかえて、その度に父親もかわったわ。

小六の時よ。義父から性的虐待が始まったのは…母はかばってくれなかった。『妊娠させられたわけじゃないでしょう』って。

何度死のうと思ったかわからない。

だから、いくら惚れた男のためとはいえ、自分からそんな世界へ飛び込んでいこうとするあの子が許せない。絶対許せない。

あたしはやっと…やっと、そんな醜い世界から命からがら抜け出したっていうのによ!」



勢い余って、灰が落ちた。



慌ててティッシュで揉み消したが、真っ白い鏡台は灰色に汚れ、小さな焼け焦げができた。



瑛子はヤケになって吸殻をその焼け焦げに擦りつけた。