確かに俺はあいつを求めていた。
あいつの顔が頭から離れず、この腕に抱きたい、自分だけのものにしたいと強く願った。
だが、それが愛することと言えるだろうか。
俺は…一度でも、あいつの幸せを心から祈ったことがあるだろうか。
『話があるから近々来てよ』
瑛子から電話があったのは、それから一週間ほどしてからだった。
西日がまともに当たる2DKの狭いアパートで、瑛子はいつもと変わらない不敵な笑みを浮かべて待っていた。
「病院に来たわよ。あの子」
勇介の顔に一瞬、緊張が走った。
が、それと気づかれぬよう平然と応えた。
「そう」
「ふふっ。無理しなくていいよ」
瑛子は勇介にマグカップを手渡すと、そのまま奥の寝室にあるご自慢のドレッサーに座って脚を組んだ。