だから賢に何と言われようと、今の自分には言い返す言葉が見つからない。
ただ、黙って受けとめるしかない。
この手紙の中に、美里との永遠の別れがあるような気がしていた。
この手紙の中に…
『また逃げるのね』
美里の声がした。
『あなたは、いつも大事なものから逃げるのね』
あの時の声が、匂いが、肌の温もりが蘇り、勇介の胸を揺さぶる。
俺は、もう…逃げない。
勇介はゴクリと唾を呑み込むと、迷いを振っ切るようにベッドから跳ね起き、ついに手紙を手に取った。
『勇介、申し訳ない。
あの日、俺はおまえの伝言を美里さんに伝えなかった。
おまえが瑛子さんとよりを戻したと嘘をついた』
勇介の嫌な予感は当たった。
これでハッピーエンドってわけか。