部屋へ帰り、キッチンでやかんに水を入れ、コンロにかける。
まずは腹ごしらえだ。
誰かに言い訳でもするように、袋からパンを取り出した。
好物のカツサンド。
しかし、一口かじった途端、食欲は急に失せた。
こいつのせいか。
片側の腰を浮かし、さっきジーンズのポケットにねじ込んだ手紙を取り出すと、思いきり畳に叩きつけた。
二つに折れ曲がっていた封筒が、ゆっくりと口を開いていく。
それを最後まで見届けることもなく、ベッドの上に寝そべると、両手を頭の下で組んで目を閉じた。
一大決心をして東京へ帰ってきたはずだった。
本当に大事なものを見つけて戻ってきたはずだった。
だが、その晴れ晴れとした思いはもはや風前の灯火となっていた。
愛や夢を語る前に、人として乗り越えなければならないことがあった。