錠を下ろした刑務官が再び勇介の前に姿を現したのは、留置所で四日目の昼食を済ませた時だった。
「今朝、佐山瑛子が白状したよ。おまえの言う通りだとな。
おまえが前科モンにでもなれば自分の所しか行き場がなくなると思ったそうだ。
ま、せいぜい優しくしてやるんだな。この色男が」
刑務官は勇介の背中を叩くと、男爵芋のような顔でワハハハと笑った。
勇介はジングルベルがエンドレスに流れる師走の街へと舞い戻ってきた。
商店街をふらふら歩くサンタ姿のサンドイッチマンの背中を見ながら考えた。
瑛子が急に態度を変えたのは何故だ。
病院にいるこの数日間で、いったい何が…
しかし、思考はそこでストップした。
勇介は疲れていた。
身も心もボロボロだった。
家へ帰り、自分のベッドで眠りたい。
瑛子のことも、美里のことも、自らの罪の意識も何もかも忘れ、今はただ眠りたかった。