痩けた頬を刃先がかすめた。
勇介は暴れる瑛子を押さえつけ、ナイフを弾き飛ばした。
が、一瞬の隙をつき、瑛子は再びナイフをつかむと、今度は自らの手首に突き立てた。
「瑛子!!!」
血飛沫が上がった。
勇介はタオルを裂いて傷口をきつく縛り、すぐに救急車を呼んだ。
「瑛子、しっかりしろ!」
傷は深い。
タオルが見る見る赤く染まっていくのと引き換えに、瑛子の顔から血の気が引いていく。
賢から電話があったのは、まさにその時だった。
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