勇介はその辺にあった女性週刊誌をパラパラめくりながら、うんと面倒臭そうに応えた。
「別に、そんなんじゃねぇし」
ふと見ると、どこから取り出したのか、瑛子はペティナイフの鞘をおもむろに外し、キラリと光る刃を蛍光灯にかざして微笑みを浮かべている。
「ふふっ、真中美里、か…」
「ざけんな!あいつに指一本でも触れてみろ」
「あはははっ。ほーら、怒った」
こいつ…
薄笑いを浮かべながらナイフをくるくる回している瑛子を前に、勇介は込み上げる怒りをなんとか収めようとした。
こんなのはタチの悪い冗談に決まってる。
それでも、美里の汚れを知らない無邪気な笑顔が散らついて、どうしても冷静ではいられなくなる。
もしも、もしも…悪い方の想像が先に立って、感情をうまくコントロールすることができない。